2016年4月9日

ドラマ三国志(Three Kingdoms)を見ました。

 最近、三国志 Three Kingdoms(通称・ドラマ三国志、原題・三國)を視聴し終わりました。このドラマ三国志は2010年に中華人民共和国で大河ドラマとして放送されたドラマで、制作費は日本円で25億円、制作期間は6年間という超大作で95話もあります。その95話のうち、見ないで飛ばしたものもあるので全てでは無いですが、一応最後まで視聴し終わったので、記念に感想をば、書いておこうと思います。








 まず、海外ものとしての定番の疑問として、「字幕版と吹き替え版のどちらで見るべきか」についてですが、これについては「吹き替え版」の一択です。第一に、中国語を聞いていてもてんで分からないこと(おい)。少しだけ理解できる英語なら英語で聞く価値はありますが、まったく理解できない言語は字幕にしておいて聞く価値はありません。

 第二に、吹き替え版の曹操の声が良いことです。Youtubeに一部分の動画は転がっているので、確認してほしいのですが、原作の曹操の声は少し高すぎで声に威厳がありません。一方で、吹き替え版の方は深みがある曹操らしさがある声質です。また、人をバカにしたような「ムハハハハ!」という笑い声が最高で、声優の演技が光っているといっていいでしょう。曹操は三国志の主要人物なので、この点は重要です。

三国志 Theree kingdoms、の曹操
一般のイメージからはかけ離れている容姿だが
声と演技に曹操のダーティーさが出ている

 したがって、このドラマを見るときはぜひ吹き替え版を見ましょう。あと、英語なら分かる部分もありますが、だいたいの人は中国語など聞いてもひとつも分からないでしょうからね。

 ただし、古代中国が舞台になっているので、吹き替え版では一瞬聞いただけでは理解しにくい言葉が劇中には登場します。地名、官職、人名に関する語が劇中に出てきたとき、相当の三国志マニアでないと一瞬聞いただけでは分からないと思いますし、実際、私は一部の場面でよく分からないなぁ、と思いました。その辺りは、文字情報として漢字が表示される字幕版が優れているかも。

 全体の感想としては、ムラがあるもののかなり良い作品でした。序盤は三国志ファンなら一見の価値があります。序盤は展開が早く、省かれている名シーン、よく分からないドラマオリジナル要素があるものの、中国の大河ドラマとしてかなりの出来です。

 ただ、中盤に差し掛かるにつれて、ちょっとダレてきます。特に、赤壁の戦い以後。赤壁の戦いが40話代後半なのですが、それから90話ぐらいまでだったでしょうか、長々と荊州争奪戦が続きます。荊州争奪戦は日本人としては馴染みの薄い部分であり、派手さにもやや欠ける部分であるので、ちょっと冗長で見ていられずに飛ばしました。何しろ、何十話もありますから、興味の無いものをそんなにも見ていられないので早送りしたところも…。それでも中盤は、曹操、曹丕、荀彧などの魏の武将、文官の場面が用意されているので、楽しめることは楽しめます。

 しかし、特に曹操が亡くなってからはあまり魅力を感じませんでした。孔明などが主役なのでしょうが、個人的には孔明にはあまり興味が無いので、わりとどうでもいいんですよね。有名なシーン(泣いて馬謖を切るとか、五丈原とか)は知っているのですが、その他の枝葉を延々とやられても…。

 もっとも、終盤でも、魏の司馬懿とそれにかかわる話だけは見所です。一度、このドラマの司馬懿先生を見てくだされば分かると思いますが、この司馬懿が本当に怪演です。「妖怪じみた才知を持つ不気味な司馬懿」をこれ以上の無いほどに演じていました。そのため、何より「司馬懿が見たい」という一点だけで視聴を続けていました。

容姿からして妖怪じみている司馬懿
誰にいじめられようが上手く立ち回ります
演技も妖怪じみていて素敵

 名場面についてはいくつもありますが、やはり陳宮の処刑、曹操と袁紹の酒盛り、曹操と劉備の酒盛り、荀彧の死、関羽が曹操を逃す場面、司馬懿が権力を握って皇帝を踏んづけるシーンなどなどが印象に残りました。三国志はこれ以外にたくさんの名場面があり、ドラマ三国志のなかにもちりばめられていたのですが、どうしても特におもしろかった序盤のシーンばかり覚えています(笑)

 好きな登場人物は、曹操、司馬懿、陳宮、荀彧ですかね。曹操はダーティーさと同時にコミカルさもある曹操で、官渡の戦いで袁紹を騙した後に高笑いしながらぴょんぴょんと跳ね逃げていく曹操などは印象的です。この曹操はどちらかという董卓っぽい容姿をしていていて、これだけだと一見「曹操らしい」とは感じないのですが、声の演技もあって曹操らしさが感じられます。
 司馬懿は外見からして良い出来です。曹操と話す時など要所のシーンで、目を見開いて目ぢからを発揮して「こいつは食えないな」と視聴者にも感じさせる妖怪っぷりを演技で見せ、人外っぽい不思議な魅力を漂わせています。陳宮は脚本の力が大きく、プライドが高い正義漢として描かれており、呂布の配下になってからは母親のようで好感が持てる人物として描かれていました。荀彧については、頼りがいのある重臣の感じが良く出ていました。

 残念だった人物を敢えて挙げると、関羽です。演技云々以前にちょっと身長が低すぎて、偉丈夫たる関羽らしさが出ていなかったように感じられました。劉備や張飛と並んで身長が低いか同じぐらいなのは、ちょっといただけません。あと15㎝は欲しいところです。それこそ関帝廟などで神格化されており、国士無双のイメージがある関羽なのですから、そのイメージに見合うだけの体格と威厳が欲しいものです。

左から、張飛、劉備、関羽。

 他の蜀のメンバーについては、張飛、劉備、孔明はなかなかの演技だったと思います。張飛は「これが張飛だな」と感じる張飛で、頭が悪く腕っぷしだけの男をよく演じられていました。張飛といえば酒での失敗が有名ですが、劇中の酔っぱらうシーンは張飛らしさが出てますね。劉備については漢室の復興を真摯に考え義に生きる善人に終わるだけでなく、下級役人に凄むシーンなどに任侠の統領を張っているだけの威厳も感じさせてくれる演技で好印象でした。孔明は泣き顔の印象しかありませんね。

 また、謎のフェードアウトを遂げているため、あまり印象に残らなかった人物もいます。特に、郭嘉です。郭嘉は途中でいちおう出てくるものの、曹操と袁紹を比較して曹操を励ます本来ならば郭嘉がかっこよく決めるシーンを脚本上の都合なのか荀彧に取られた挙句、何の活躍もせずにいつの間にか死んでしまいました。郭嘉役の人が何かやらかしたのかしれませんが、このドラマのオリジナル要素として、郭嘉の存在感はオミットされていました。その他にも、脚本上の都合から、史実とは違う場面が多々ありますが、この点はドラマですので割り切りが必要ですね。

 これから視聴する人にアドバイスするなら、呂布と陳宮が処刑されてしまうまでの序盤は、三国志ファンであれば必見です。もし、そこに行くまでに合わないようならば、これ以降も合わないでしょう。問題は中盤からで、後半に差し掛かるにつれどんどん冗長になってきます。そうなったら、好きな登場人物が出てくるシーン、興味のあるシーン以外はどんどん飛ばして観た方が良いです。


0 件のコメント:

コメントを投稿