2018年3月24日
電車内、正論、女子高生、マック。
もう8年ぐらい前の話。
帰り道、空いた電車内で本を読んでいると、同じ車内に知的障碍者、そうでなければ精神障碍者とおぼしき少女が乗り込んできて、座っている乗客にちょっかいをかけはじめた。へらへらと笑いときおり実に楽しそうな笑い声をあげながら、他人を見つめ、たまに所持品や身体を触ろうとして制止されている。「初対面の人をじっと見つめたり、べたべた触ったりしてはいけませんよ」などという正論は、彼女には通じそうにない。
彼女は端の方から一人ずつちょっかいをかけつつ、どんどんこちらに近づいてくる。ついには、私の左側に座っていた女子高生の前まで来た。見た目気の強そうな女子高生は関わり合いにならないように無視すると決めたようで、耳にイヤホンをして携帯を見つめながら押し黙っている。その態度にも構わず、女子高生の前まで来た少女はへらへらと笑いながら顔を女子高生に近づけ、じっと見つめる。チッ、と女子高生が大きく舌打ちをしたが少女はまったく動じない。そして、女子高生の所持品が気になったのか、それを触ろうとして、軽いもみ合いになっていた。女子高生にしてみれば、訳の分からない少女に訳の分からないことをされて、背筋がゾッとする思いだったかもしれない。
しかし、そんな女子高生の気持ち(私の勝手な憶測だが)とは裏腹に、私は心の中で少女に拍手喝采を送っていた。少女がへらへらと楽しそうなのと女子高生のムカついた感じのギャップがおもしろかったし、なにより相手がムカついていようが女子高生だろうが、そんなこと全くお構いなしに笑い続ける少女の無敵さに感心していた。
女子高生と少女のかけあいを見ながら、私が「やはり気狂いは強いな」などと思いながらニヤニヤしているうちに、少女は女子高生に飽きたのか、もみ合いをやめた。そして、こちらに近づいてきた。このとき、自分は彼女に対してどう対応してやろうか、ということを考えていた。ここは一発、彼女のするような笑い声をたてて応戦してやろうか、などと考え、少女の楽しそうな様子になんだかハイになって、彼女を待ち構えていた。
ところが、不思議なことに、彼女はへらへらと笑うその表情のままに、こちらには一瞥もくれず、そうすることが当然のように自分の目の前を通り、スルーしていった。
意味が分からなかった。少女は端から一人ずつちょっかいを出していたから、てっきり次は自分にちょっかいを出してくるとばかり思っていた。なのに、なぜ避けられたのか。もしかしたら、私は知らず知らずのうちにニタニタしてしまっていて、気狂い少女から同類か何かに見え、それで避けられたのかもしれない。それとも、少女はこれまでの経験から若い男はスルーするように学習していたのかもしれない、などとも考えた。
それから少女は中年女性などにちょっかいを出して諭されるなどした後、さいごまで私にちょっかいを出さずに途中の駅で降りて行った。少女との対決(?)は避けられたものの、その日は釈然としない気持ちを抱えながら帰ることになった。
当時からだいぶ経つものの、スルーされたことが意外すぎたのでいまだ記憶に残っている。いったいどういう理由で自分がちょっかいを賭けられずに済んだのか、いまだに謎のままだ。
(マック要素はありません)
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